November 30, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第十三話熊木杏里の夜なよな白書11/29放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 11/29放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/29放送より

あらすじ

書いたことと現実が入れかわってしまう小説を、みそのぎも書いていた。現実で人を殺したことを忘れるために、違う生活を現実にしたはずが、みそのぎは厚子の愛を確信すると、自白し、警察に捕まってしまった。厚子はみそのぎははじめから現実をのがれることはできないと思っていたのではないかと察する。そしてみそのぎの出所を待つことを心に誓った。

最終話
「みそのぎさん・・・」
 厚子は手に持っていた本を本棚に置くと、急いで本屋から外に出た。だがそれは人違いであった。厚子はため息をもらし、雑踏の中に立ち尽くしていた。通りの向こうの信号が赤から青に変わったとき、男が歩いてゆくのを厚子は見た。白いシャツにグレーのスボンをはいた長身の男だった。みそのぎによく似ていた。
(まだだよね・・・)と心の中で思い、あきらめて本屋にもどろうとすると
「どうしたのあっちゃん・・・」
 手に何の本を買ったのかわからないが、大学で知り合った立川秀夫が立っていた。一緒に本屋に来たのだった。秀夫は心配そうに厚子を見ているが、厚子はそっけなく
「なんでもないよ、行こう」
と言って本屋を出た。外は初夏の香りがした。厚子はあれからずっと誰にも心を許せないでいた。秀夫が自分に好意を持ってくれていることもわかっていた。だが、どうしても何かが足りなかった。しかしみそのぎでなければ駄目だというそれが、何なのかも分からなかった。しかし、みそのぎを裏切ることは出来ない。それが厚子の心の呪縛であった。大学へもどる途中、コーヒーショップに目をやった秀夫が、
「あっちゃん、コービー好きだよね、ちょっと待ってて」
と言って日のあたるまぶしい道をかけて行った。厚子はそれを見て思った。牢獄の中で、日の光のあたらない毎日を鉛筆色の壁を見ながら、これから来るであろう自分との未来だけに希望をいだき、刑に服しているみそのぎのことを・・・。

 それから更に四年が経ち、厚子が26になった秋。
 みそのぎの服役が終わり、刑務所を出ると迎えに来ていた厚子を見て、みそのぎは一瞬何かを言いかけたが、思いとどまったようにやめて、そのまま歩き出した。
 年齢よりも老け込んだみそのぎの、しばらくぶりに見るその後ろ姿を見つめながら、厚子は静かについていった。

(完)

ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/29放送分終わり

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November 23, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第十二話熊木杏里の夜なよな白書11/22放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 11/22放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/22放送より

あらすじ
夜の白浜公園で、みそのぎは厚子に昔の恋人を重ねているようにふるまい、今までついてきてくれた厚子の気持ちを確かめるように「ずっとぼくのものでいてくれる?」と尋ねるのだった。そして「私はいるよ」と答えた厚子に小浜純子を殺したと自告する。ついにみそのぎは厚子の目の前で、右京ひきいる警察に捕まってしまったのです。


 ひとり、冬の風を首にまいて、厚子は、みそのぎと初めて出会った公園のブランコにいた。揺れているのは自分なのか世界の方なのか、そんなふうに厚子はブランコをこいだ。ただ、無感情にブランコは揺れた。みそのぎが捕まってから三日が過ぎた。みそのぎがいない空気はまずく感じ、それが厚子を苦しめた。
 右京は、厚子が警察へ一度出向いたときに、連絡用だからと渡しておいた携帯電話に、盗聴器をつけておいたのだと厚子に説明した。だから白浜公園に行ったことも知っていた。逮捕に至ったのはどうやら右京の方でも、殺された小浜純子の部屋から指紋が出て来てそれがみそのぎのものと断定されたからだったという。
 黙っていて悪かったと謝った。だが、厚子はそんなことどうでもよかった。ただ、みそのぎがいない。たとえ人を殺していようと、近くにみそのぎがいない、その現実につぶされそうだった。だが手元には、あのあと右京が詫びるように渡してくれたみそのぎの書いたあの小説があった。

『神様、ぼくは人に好かれない人間ですか。だれもぼくを好きにはなりませんか。自動的にボタンがあればもろくこの世を破壊してしまうような恐ろしいボタンがあれば、ぼくも自分を壊すことができたでしょうか。
 しかし、もう純子を殺してしまった。ぼくは、自分を殺せずに。  
 骨董品屋の前を通るたびに純子は笑って客に話をしていた。むさぼるように客たちはテーブルや茶器・棚といっしょに長身で切れ長の目の純子を見ていた。
 毎夜九時には自転車で近くのスーパーにより、楽しげに、時に憂いたように、純子は家に帰る。ぼくはそれを見ていた。アパートの五階で電気は誰かのためについているようだったが、男の来ない時間帯があった。ぼくは決めた。骨董品屋で器をひとつ買った。

 夜の十時に、それを持って純子の家を訪ねた。この時間、純子は部屋で二人分の夕食をつくっている。あの骨董品屋の店長の知り合いだと嘘をつき、代々家にある皿を鑑定してほしいと、ドアの前、インターホンで言った。
 男を待つだけの純子は無防備に、大好きな骨董品とやらにひかれ、出て来た。やさしい色のカーディガンをはおって純子は言った。
「私もよく似たのを持っている」
 器はすぐにぼくが受け取り純子を部屋に押し倒し、叫び声をやめさせるために、すぐに持って来たひもで、首を結んでやった。きつく結んでやった。静かに純子は息絶えた。台所では何か野菜の煮える音がしていた。家の匂いがぼくをつつんだ。持って来た皿と器を持ってすぐに家を出た。
 薄暗い夜道がぼくを隠してくれた。胸がおかしくなる。頭が別のところにあるようです。神様、ぼくはなぜこんなことをしてしまったのでしょう。まるでわからないのです。なぜ純子はあんな男とつき合っていたのでしょう。ぼくではなくて』

 文章はそこで終わっていた。激しい思い込みと、妄想の中で、みそのぎは生きていたのだ。純子という生涯もう手に入らない理想の恋人。厚子は思った。この小説は本当のことと理想で書いたものが入れかわって存在している。ということは、この文章が現実で、恋におちたあの文学的でやさしいみそのぎ、デートをしながら「ずっとぼくのものでいてくれる?」とたよりなく言ったあのみそのぎは、みそのぎ自身が本当はなりたかった自分の理想の現れの姿だったんだろう。
 自ら、自白し警察へ連れてゆかれたのも小説を書く時にはすべてみそのぎが自分でこうなることを望んでいたということだ。
 厚子はあの時、心からみそのぎを愛しいと思ったことを自分で褒めてやりたいと思った。誰かに愛されなければ、みそのぎの描く物語は完結には至らなかったのではないか。厚子はそうぼんやり思った。
 冬の風にうもれるように公園の草木は赤い色に変わり、時間はほんのひとときも止まってはいない。
 ブランコをおりると砂はまた無機質な音をたて、動いた。鉄の鎖が錆び付いた匂いを醸し出し、冷たくひえた。再び鉛のように足にからみつくものに気がつきながら、厚子は、公園の出口にむかって歩いた。マフラーが空と同じ色をしている。振り向くと、ブランコの上に女が座っている。何年かかるか分からない、みそのぎの出所を待たなくてはならなくなった自分がそこにいた。

ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/22放送分終わり

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November 16, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第十一話熊木杏里の夜なよな白書11/15放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 11/15放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/15放送より

あらすじ
厚子はみそのぎからの電話で、夜の白浜公園に向かうことに。車の中でみそのぎに過去、どんな人とつき合っていたかという質問をしたところ、厚子が初めてだという返事がかえってきた。

 夜の白浜公園は若いカップルたちでいっぱいだった。デートスポットになっているようで、近くにはレストランやホテルも多くたちならんでいた。厚子とみそのぎは車をおりると、人が歩いてゆく方へつづいて歩き始めた。
「すごい人だね」
 みそのぎは厚子の方を向いたが、目下に広がる町のネオンを見ているようだった。
「そうですね・・・あの階段をあがってゆくみたいですね」
 そう答えるとみそのぎが妙なことを言い出した。
「厚子、何か飲む?いつも君は外に出ると缶ジュースを買うだろう?」
 近くの自販機には色とりどり様々な種類のジュースが並んでいる。みそのぎは自販機を指差すと、子供のようにはねてはしゃぎ出した。
「ぼく、コーラを買うよ。厚子は何にする?」
 立ち尽くす厚子をそのままに、みそのぎは次々におかしなことを言いはじめた。
「むこうに厚子の好きなオニオンリングのおいしい店があるよ、あとで行こうか」
 にこりと笑うとそのままコーラを飲みながら厚子を見た。
 厚子が白浜公園に来たのは、小学校の時の遠足以来だった。あれから七・八年、誰とも来たことのない場所だった。厚子の足が地面につきささったまま、みそのぎは
「行こう、向こうからきれいな夜景が見える」
 まわりの若いカップルたちを見ながら、厚子はなぜ自分は普通の付き合いが出来ないのだろうと考えた。自分だけまるで、異空間にいるようだった。その目ではしゃいでいるみそのぎを見ると、厚子はたまらない気持ちになった。みそのぎに歩みより、街が見下ろせる場所まで行こうと自ら言った。みそのぎはごく自然に厚子の手を握ってきた。まるでここに来たのが「久しぶり」といった感じだった。
 ベンチに座ると、つぶのように街の灯りを見下ろすことが出来た。反対側にはぽっかりと月が浮いている。あきらかにみそのぎ目は先ほどまでとは違う表情を見せていた。
 厚子は黙ってみそのぎの手につながれ街を見ていた。みなロマンチックに肩を寄せ合い何かを話している。
「誕生日以来だろう」
 みそのぎはタバコをとり出した。タバコを吸う姿を厚子は今まで見たことがなかった。
「どっちの誕生日だっけ」
 厚子が言った。みそのぎはタバコを吸いながら、遠くを見つめて、
「六月は君の誕生日だろう」と、呟いた。
 はしゃいでいる自分を演じていたようにみそのぎは、つかれたようにタバコをふかした。今まで見たことがないほど、近寄り難いみそのぎの顔は、美しくよれて、厚子を刺激している。タバコの煙が夕空に白く立ち上る。
「ほら、厚子も吸ってみるか」
 くちびるが厚子の目の前にせまり、タバコの匂いがした。みそのぎはくわえていたタバコを厚子に持たせようと片手で厚子の肩を抱いた。いつもと違うみそのぎの香りに厚子は体が熱くなるのを感じていた。言われるままにタバコを手にとって厚子は生まれて初めてタバコを吸った。
「ゴホッ・・・」
 口の中に煙の匂いがした。厚子は涙目になってみそのぎを見た。初めてみそのぎの口元が笑っていないことに厚子は気が付いた。
「ずっと、ぼくのものでいてくれる?」
 そうつぶやくと、厚子に口づけをした。まわりでも同じような光景が繰り広げられ、厚子は何も抵抗する気になれなかった。目を閉じると、みそのぎの唇以外たよれるものがなくなってしまったように厚子は感じた。
 みそのぎから流れてくる感情を胸に厚子は言った。
「ずっといるよ、私は」みそのぎの体が一瞬止まった。厚子はもう殺されてもいいような気がした。
「ぼくは人を殺したんだ。小浜純子という人を殺しました」
 みそのぎが厚子の体に口をあてて、そう言って、厚子を少し強めに抱きしめた。厚子の背後から右京が銃を片手に現れ、近くにいた三人の男によってみそのぎは引き離され、腕を押さえられ捕まった。厚子はぼんやりとその光景を見ながら携帯電話をポケットから出し、その場に捨てた。右京から渡された銀色の携帯電話だった。
 何が起きたのか厚子には分からなかった。みそのぎは抵抗もせず、男たちに押さえられ、かすかに厚子の方を振り向くと銀色の手錠を背に車に乗った。

ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/15放送分終わり

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November 09, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第十話熊木杏里の夜なよな白書11/8放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 11/8放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/8放送より

あらすじ
右京という刑事は、みそのぎが人を殺しているかもしれないと疑っているようだった。厚子は知らないと通したが、やはり気になり警察へ出向いた。そこで右京の知りうるみそのぎのことを聞いたのだった。


「厚子、みそのぎさんから電話だよ」
 恵美子の手から受話器を取ると、厚子はひと呼吸してから呟いた。
「はい、三葉です」
 廊下には木の匂いがただよっている。厚子は壁によりかかった。
「三葉さん、ぼくです。良かったら、今日、これから会えませんか?白浜公園は月がよく見えてきれいですよ」
 みそのぎは、静かに言った。厚子の耳に優しく響くいつもと変わらぬみそのぎのその話しぶりに、厚子はほっとしたように少し微笑んだ。
「はい」
 そう言うとみそのぎはすぐには返答せずしばらく黙ってから鼻をくすぶらせて笑いながら言った。
「ふふ、では八時に迎えにあがりますね」
 電話越しに、厚子はみそのぎの顔を想像し、みそのぎもまた厚子のことを想像しているようだった。電話を切るとよそよそしく厚子は部屋へ上がって行った。階段の途中でふと下を見ると母恵美子がこちらを見ている。心配そうに厚子を見て、またテレビの方へ向いてしまった。厚子はそれに気を止めることなく自分の部屋に消えていった。時計は午後七時二十分をさしていた。
 暗闇から抜け出すように厚子は服を着替えた。このままもう二度とこの部屋に帰らないのではないか、厚子はそう思った。部屋全体が厚子の心を映し出しているように、ただ机のランプだけがぼんやりと照っていた。
 厚子がドアを出て下へ降りた時、恵美子が台所で茶を入れていた。冷蔵庫からナスの漬け物を取り出すと厚子の背を見ながら言った。
「ちょっとあんた、あんまり遅くなったら駄目だからね。分かってる?」
 茶を持ってすすりながら座った。厚子は振り向かないまま、テレビの方を見て言った。
「大丈夫だよ。すぐ帰るから」
 バタンとドアを出て行った。恵美子の視線はドアに残されたままだった。

 外に出ると八時五分前だったが、みそのぎの車が止まっていた。向いの家の柿の木の下にみそのぎが立っていた。夜の闇と深い緑色の葉に、怪しかった。
「行こうか」
 ガロロロロッ
 近所に車の音が響いて、厚子は気が気ではなかった。
 ちらりと横を見ると、みそのぎはいつものように軽く口元に微笑みを浮かべ前を見ていた。ハンドルを持つ手の指は細くただれていた。厚子はハンドバックを膝の上にのせて、シートベルトをした。体を少し右側に倒すとみそのぎの香りがした。
「三葉さん、今日は元気がないみたいだね、どうかした?」
 みそのぎはなんとなしに厚子に尋ねた。景色を眺めながら、
「なんでもないです、ちょっと、母と喧嘩しちゃって・・・」
 厚子にはそれ以上何も言えなかった。
「あまりお母さんを怒らせては駄目よ。だけど、君はそんな風な子に見えないから何か特別な理由でも?」
 白浜公園までは近道で行っても20分ほどだろうと厚子は思い、言った。
「私が男の人とこんなふうにつき合うの初めてだから、心配なんだと思います。みそのぎさんは以前はどんな人とつき合っていたんですか?」
 信号が赤になったので、みそのぎはブレーキを踏み、厚子を見た。目の奥に少しのネオンと厚子が映っている。
「ぼくは君が・・・厚子が初めてだよ」
 みそのぎは子供のように微笑んで言った。前に見たことのある不思議な笑顔だった。
 (そんなわけないじゃない・・・)と
 厚子は思ったが、胸がそわそわして、言えなかった。みそのぎの部屋に落ちていた。茶色の髪の毛をふと思い出した。
 何も覚えていないのかもしれない・・・厚子の心は雲のように、みそのぎの吐く言葉の中に隠れていった。


ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/08放送分終わり

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November 02, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第九話熊木杏里の夜なよな白書11/1放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜なよな白書 11/1放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/1放送より

あらすじ
みそのぎの家で結ばれた厚子は、帰り道、右京という女刑事に待ち伏せされていた。右京は殺人をしたかもしれないみそのぎを調べているようだった。厚子はみそのぎの無事を信じようとしていた。


 翌朝、厚子は学校を休んだ。軽い熱が出ていた。頭に冷凍枕をタオルにまいて敷いてくれた母恵美子はすでに働きに出てしまっていた。昨夜のことを考えると眠たくなってくるが、厚子は右京に、今日、学校が終わったら署まで来てほしいと言われていた。布団にうずくまりながら、みそのぎのことを考えた。(本当に殺しなんて出来るような人じゃない・・・)
 厚子は自分は何もしらないと言いきかせた。小説に書いてあったこと以外なんの証拠もないし、それに、そんなことを警察に話しても信じてもらえる筈がなかった。しかしこんな小さな町で殺人犯がつかまるのには、よっぽどでなければ時間はかからないのではないかと、厚子は思っていた。
 しかし、一体、みそのぎは誰を・・・
 と思った瞬間だった。ベッドから起き上がり、厚子は足をもたつかせながら部屋を出て、木のきしむ階段を降りた。
 茶の間のテレビをつけた。リモコンでチャンネルをまわし、お昼のニュースを探した。確かみそのぎの小説には「純子」と書かれていた。純子という名でここ最近殺されたOLがいたような気がした。次々とキャスターによって伝えられるニュースをぼんやり聞きながら、厚子は(どうしてこんなことになったんだろう)自らの運命を憎みながら、熱が上がってゆく最中にうっすらみそのぎの顔を思い浮かべた。しかし、その顔がだんだん血だらけに染まってゆく。厚子ははっと体を起こした。昨夜のみそのぎの腕の感覚に取り巻かれながら、厚子はまるで蛇のようにもがいた。
 時々母親のような顔をし、時々子供のようにひ弱な顔で、厚子は着替えを始めた。時計は昼の1時を差していた。

 赤い靴をはいて、厚子は薄く化粧をしていた。ほころびそうな己の気持ちを隠すように。歩き向かう先は右京のいる警察署だった。微熱をかかえながら、赤いパンプスは道路をけった。くだけた石がそれを阻むことが出来ないでいた。
 パトカーの並ぶ警察署の前まで来ても、厚子は顔色を変えず自動ドアの向こう側へ消えていった。


 右京を訪ね、通された部屋で厚子は、鏡を手にし、もう一度、紅をぬった。手についたマスカラもまぶたの上のアイシャドウも厚子にからみつく、みそのぎの暗示のように。

「ガチャ」
 ドアの音とともに右京が入ってきた。厚めの絨毯は何の音もしない。右京は厚子の様子を見て目を細めた。厚子の昨晩とは違う雰囲気を見ながら、女というものはそういうものだと思っているように見えた。
「よく来てくれたわね」
 挨拶のように厚子に軽く右京が言った。何もかも知っている、という風な口ぶりが刑事独特な気がした。
 厚子は黙ってうつむいていた。その様子を見ても右京は変わらなく尋ねて来た。
「今日、学校はどうしたの?」
 窓の外を見て言った。厚子は熱を思い出し、心の中にそのまま溶け込んでゆく怒りを感じた。
「みそのぎさんが・・・何かしたんですか」
 右京はいやらしい感じでなく、にこっと口元を笑って振り向いた。
「あなたを傷つけるつもりはないの。知っていることを教えてほしい。驚かないで聞いてくれるかしら」
 厚子は下をむいて赤い靴がこの場所から逃げてしまわないかじっと見ていた。


ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/1放送分終わり

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October 26, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第八話熊木杏里の夜なよな白書 10/25放送分

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 10/25放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」10/25放送より

あらすじ
 小説に書いたことが現実と入れ替わるという朗読会「あさがお」の代表者みそのぎのとつき合っている厚子。残された小説には本当のことが記されていることを知り、みそのぎの過去を知るべくついに読んでしまった。そこには、みそのぎが純子という女性を殺したことが記されていた。それでも厚子はみそのぎに惹かれてゆくのだった。

 目が覚めると厚子はみそのぎが横で寝ているのをしばらく見つめ、押し寄せてくる幸福感に身をあずけた。厚子は処女だった。だが自分を責める気は無かった。目を閉じるとさきほどまでの自分が思い出され、ひたすら幸福の中にいた。
みそのぎは向こうをむいて眠っている。厚子はみそのぎを起こさぬよう静かにベッドを動いた。
(いつの間に眠ってしまったのだろう)
 時計を見ると、午後10時15分あたりをさしていた。
(家に帰ろう)
 そう思い、厚子は洋服を手に取った。腰のあたりが、こそばゆいような気になった。テーブルの上にはさっきまでの茶を飲んだあとが、静かにそこにたたずんでいる。
 厚子はみそのぎが人殺しているかもしれないという大きな爆弾を胸に抱えていた。いつ破裂するかもわからない。
 眠っているみそのぎを見つめながら、厚子は洋服を着終えた。テーブルの上のメモ帳に「また来ます」と書き、厚子は部屋を出た。階段をおり集会室の方へ回った。暗闇がせまってきていた。集会室には窓の外からの月の灯りが差し込んでいた。靴をはいて厚子は息を吸った。外の空気を思い切り吸いたい気分だった。空に手をのばして歩き出そうとした時だった。ふと視線を感じ厚子は動きを止めた。強くささるような視線だった。厚子は体じゅうが緊張してゆくのがわかった。はっとみそのぎの家の方を振り向いた。しかし、そこにはさっき厚子が出て来た時と何も変わらず家が静かに立っていた。街並みもシーンとしていた。みそのぎの部屋にだけ相変わらず灯りがついていた。厚子はふっとおかしくなって、みそのぎの部屋の電気を消してきてあげればよかったと思った。
 気を取り直し、厚子は歩いた。公園が左手に見え、そのずっと向こうには幻覚のようにいくつかの高層ビルがぼんやり灯りを放っていた。歩きはじめてまたわずかの時、厚子は再び視線を感じた。今度はすぐ近くだ。二の腕のあたりがざわつき、身の毛がよだつのを覚えた。厚子は何かもうだめだと思った。すると手前の電柱の影に一人の女が厚子を待っていたように、こちらを向けて立っていた。よく見るとどこかで会ったことのある顔だ。女はすぐに名を名乗らなかった。厚子はどうしてよいのかわからず視線はこの人だとわかりながら立ち尽くしていた。すると女は厚子の方に歩み寄り突然、腕を掴んだ。
「ちょっと・・・」と厚子が言いかけると
「黙って歩いて」と小声でそれを遮り、
 女はジーンズをたくみに動かし歩きながら、警察手帳を厚子に見せたのだった。

 丘を下り厚子の家の近くの空き地で女は足を止めた。みそのぎの家からは随分離れたところだ。厚子はふぅと息をきらした。
 女は手首をまわしながら厚子を見ていた。厚子はいやな予感がしていた。
「なんなんですか、いきなり」
 やっと口にすると、
「あなた、私を覚えていないかしら」と、凛としたその見覚えのある顔で言った。
 厚子は(あっ)と思った。
「朗読会で」
 そこまで言うと、
「右京みか子。あなたをこのところ尾行させてもらったの。朗読会「あさがお」であなたがみそのぎ友也と関係が深そうだったから」
 そう言って右京はうっすら微笑んだ。厚子は体がこわばった。
「なんのことですか」
 震えながら厚子は、何故自分がそういうのかも分からなくなっていた。
 右京は朗読会でみそのぎのことが好きで見ていたのではなく疑って見ていたのだった。人を殺したかもしれないから・・・。厚子は愕然とした。
 右京は厚子の顔色の悪さを見て、何かを悟ったように、警察独特の雰囲気をかもし出しながら、にっこりと笑って、
「女子高生の夜道の一人歩きは危ないから、送って行くわ」
 と、また凛とした風を夜にふりまきながら厚子の前を歩き出した。街灯に灯されながら、厚子は時間の問題かもしれないとまるで自分が犯罪でも犯したかのように、生温い気持ちが手足に手錠をかけていた。

ラジオ夜ドラマ「あさがお」10/25放送分終わり

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October 20, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第七話熊木杏里の夜なよな白書10/18放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 10/18放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」10/18放送より

先週までの「あさがお」あらすじ
小説に書いたことが現実と入れ替わるという朗読会「あさがお」の代表者みそのぎとつき合っている厚子。残された小説には本当の姿が記されていることを知り、みそのぎの家でひとりになったとき、厚子は小説を発見した。これを見ればみそのぎの過去がわかる。迷っていると床に一本長い髪の毛が落ちているのに気がついた。


 髪の毛を、なんとなく気になり手に取ってみると、厚子と同じくらい長い髪だったが、厚子が黒髪なのに対し、それはうすい茶色をしていた。厚子は以前つき合っていた人の髪かもしれない。そう悟ったのか、そっと髪をごみ箱へ落とした。
 みそのぎはまだ帰ってこない。厚子は胸がやけるのを感じた。本くらい見ても今はみそのぎとつき合っているのは、自分なのだと言い聞かせた。
 パラッと一枚目をひらいた。紙質はよいとも言えぬ普通の紙だった。ワープロ打ちにされている。
「君の罪」と書かれたタイトルを見た。その下にみそのぎ友也と書いてあった。
 そして文章が始まっていた。

『ぼくは君に愛されていたのか分からない。
だけどぼくはぼくなりに君を愛していた。
なのに、君は他の男の前で挑発するような
素振りをしたり、
ぼくが君のためにしたことは、
すべて当然のように振る舞い、
悲しかった。
君にもっと大事にされたい。
ただ、そう思っていたのに、、、』

 その後も延々と同じような文章が続いた。
「君」に対するグチと自分への苛立ちだった。
 厚子は、みそのぎをこんなに苦しめた「君」という女性が憎らしく思えた。嫉妬もあった。みそのぎは、この「君」のことを忘れたいと思っていたんだ・・・と厚子は思った。逆にそれほど好きだったのかもしれない。
 パラパラと何枚かめくったときだった。

『ついに殺してやった。
綿密な計画をたてた甲斐があった。
驚かないでよかった。
ぼくを信用していた。
純子。
警察はまだぼくを疑ってはいない』

 まぎれ込んだ虫が、厚子のまわりをうるさく飛び、そして階段を登ってくる足音が聞こえた。厚子はそれを本棚のもとあった場所に返さなければいけない。指が他人のように言う事をきかない。足音は近くなっているのがわかった。膝が震えている。やっと本棚に戻し終えたとき、
「ガチャ」
 みそのぎが部屋に戻ってきた。黒髪で少し神経質そうな顔立ちで、みそのぎという男は立っていた。
 手に本を数冊抱え、またテーブルの前に座った。
 カタン、と、小さな音がしただけで、厚子はドキリとした。ソファとテーブルだけの殺風景な部屋に閉じ込められた虫のように、厚子はいた。
「これぼくが読んだ本なんだけど、三葉さん、よかったら読まないかなと思って」
 みそのぎは厚子の様子を見ることなく本をみながら呟いた。
「三葉さんもぼくも、似た者同士だから、きっといいと思うよ」
 やさしく笑った。
 厚子は目の前にいるみそのぎが、あの本を書いた人間と同一人物には思えなかった。しかし殺人をしたのかもしれないみそのぎを前に恐怖感はなかったのだ。それはみそのぎが今まで見せた哀しそうな顔と深く笑えていない笑顔とそして厚子と同じ気持ちを抱えていた人間であることすべてが嘘には思えなかったからだった。
 厚子は自分の気持ちに従った。だまって本を一冊、手にとるとみそのぎが、
「三葉さんは不思議な人だね。黙っていても気持ちが通じているようだよ」
 厚子の手を握り、そっと口づけをした。目を閉じるとみそのぎの香りがした。


ラジオ夜ドラマ「あさがお」10/18放送分終わり

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October 12, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第六話熊木杏里の夜なよな白書10/11放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 10/11放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」10/11放送より

前回までの「あさがお」
小説に書いたことが現実と入れ替わってしまうという朗読会「あさがお」。厚子は望み通りにクラスの人気者になっていったが、朗読会代表者みそのぎへの想いとともに自分を取り戻す。しかし今度はみそのぎに対し、それが本当の姿なのか、どんな小説を書いたのか、気になるのだった。


 あくる日、名前もわからない大通りから、あの細い路地へ曲がり、公園を通り抜け厚子は集会室まで自分をたどった。洋服は少し薄いのを着ていた。太陽は沈みかけ厚子は黙って歩いた。みそのぎと会う約束をしていたわけではない。あの日はただ「つき合おう」と言われただけだった。
  集会室の前まで来ると街が見下ろせる丘が家と家の間から見えた。夕暮れ時が厚子は好きだった。
「三葉さん」
 振り向くとそこにはスーツを着て待ちわびたように立つみそのぎがいた。


「集会室は時々、人に貸したりしながら使っているんだ。はじめはぼくの父親が使っていたんだ」
 お茶を入れながらみそのぎは言った。瀬戸物の白っぽいきゅうすと緑色の湯のみ茶碗がテーブルに置かれた。
 厚子は男の家にはじめて足をふみいれていた。全身をコーティングされたように緊張で体を動かすことが出来なかった。みそのぎはせっせと茶を入れ、口元は少し微笑んでいるようだった
 厚子は何から話そうか迷った。もう、勝手に口から言葉が出るようなことはなかった。
「あの、朗読会のことなんですけど」
 そこまで言いかけて厚子は黙った。みそのぎは厚子を見ている。こんなことを話して何になるのか。第一、みそのぎは関係ないのかもしれない。それに小説の中身と入れ替わったなんて、信じてもらえないかもしれない。
 顔色ひとつ変えずにみそのぎは時間の中にいた。厚子さえ入り込めないような何か特別な雰囲気の中にいた。お茶をすすり厚子は言った。
「とても楽しかったです」
 厚子はもとの厚子に戻っていた。
「そう、よかった」
 厚子はみそのぎが息をつぎながら笑う瞬間が好きだった。しかしみそのぎが自分で小説を書いたのならば、ここにいるみそのぎは、厚子が川菜紀子に理想の自分を重ねたように、だれかさんなのかもしれない。そう思うと背筋が寒くなるのが分かった。
 しかし厚子はなぜだかみそのぎから目を離せなくなっていた。最後の太陽が窓からテーブルを照らした時だった。
「ぼくは自分を好きになりたかったんだ。三葉さんは自分のことを愛してあげないとだめだよ。みな、どこかで自分を嫌い、それでもいいと思いながら生きているんだ。人に分かってもらうのは難しいね」
 みそのぎは静かにやわらかに喋った。その目は安らぎに満ちていた。
「三葉さんと会えなくてさみしかったよ。毎日、このあたりにいれば会える気がしたんだ。君にはこんなことも話せそうな気がしたんだ」
 そう言って厚子を見た。
 みそのぎに、過去何があったか分からないが、厚子は涙が出そうだった。みそのぎが小さな子供のように見えた。みそのぎの手を握って、そっとほほに手をあてた。自分と同じように思っている人がいた。それだけだった。
 学校で厚子は自分がもっと明るくて社交的な人間だったら、と、いつも考えていた。
 本当の自分を否定してきた。
 みそのぎは静かに笑った。肩によりそって厚子は目を閉じた。しばらくの間、まどろみ、二人を残して日が暮れた。
 みそのぎは厚子をそっとおしかえし、下に用があると言って部屋を出た。
 厚子はもう充分だった。部屋のカーテンはグレーで、みそのぎのイメージと同じような部屋だった。本棚には厚子の好きそうなタイトルがたくさんついた本があった。厚子は立ち上がって本を手にとって見ていった。
 すると名も無いうすい白い表紙の文集のようなものを見つけた。厚子はドキリとした。手にとると自分の手のひらにみそのぎの首がのっかっているように不気味な感じを覚えた。実際、その本は重たくなったように厚子には感じられた。
 厚子は、これがみそのぎの書いた小説かもしれない、そう思った瞬間、なぜか怖くなった。好きな人の過去など誰でも知りたいようで、知りたくないのだ
 ドアの方にごくりと耳をかたむけると下の階で物音がした。厚子は本の一枚目に指をかけた。何が書いてあるのか、知りたい。でも見ていいのだろうか。厚子は思い切って開こうとした。ぐっと下を向いたとき、フローリングの床の板のつなぎ目に、一本、長い髪の毛がはさまっているのを見つけた。

 
 ラジオ夜ドラマ「あさがお」10/11放送分おわり

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October 01, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第四話 熊木杏里の夜なよな白書9/30放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 9/30放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」9/30放送より

前回までのあらすじ
「おとぎ話」という自身の小説を書き終えた厚子は、朗読会「あさがお」へ向かった。そして朗読を終え、帰ろうとしたとき、ひそかに想い続けていたみそのぎから告白され、厚子は「はい」とうなづいたのだろう。

「厚子、起きなさい!」
 母、恵美子は、時間になっても起きてこない厚子をしきりに叫んだ。食卓にはみそ汁とたまご焼きが置かれている。古い色をした茶箪笥が長い年月を感じさせている。
 しばらくして厚子が階段をおりて下にやってきた。眠い目をこすりながら椅子に座った。
「おはよう、ちゃんと寝たの?」
 恵美子が言う。
「寝たよ・・・」
 半ば眠っているように厚子は答えた。

「おはよう」
「おはようー」
 余鈴が鳴って、学校では厚子のクラスメイト達が次々に教室へ入ってゆく。
 厚子もいつものように教室へ入ろうとした。その時だった。
「厚子、おっはよ」
 いつもは絶対に話しかけてこない厚子とはタイプの違うクラスメイトが、厚子に向かってまるで友達のように声をかけてきた。化粧をしている目もとが大人びていた。
 厚子は驚いてまたからかわれているんだと思い下をむこうとした。その時、自分の口からとは思えない感じに、声が出た。
「おはよー、ありさ、眠いねぇ」
 厚子は驚いた。
(まさか自分がこんなふうに挨拶が出来るなんて)
 すると向こうはそれが別になんらおかしいことではない、といった風に
「眠い、まじ一限目寝ようかな。どうせ高崎だしね、どれどれ、ちがいますね」
 と、英語の年老いた教師のマネをしながら厚子に返した。
 すると厚子はそれに間の手を入れるように、
「どれどれぇー」と、高崎という教師のマネをしてみせた。
「アッハハ」
 ありさというクラスメイトは笑って席についた。

 厚子も席に座った。
(これは・・・一体なんなの・・・私どうしちゃったの。鈴野さんどうして私に話しかけたんだろう)
 言葉が心とは何の関係もなく出てくるのだった。厚子は机に顔を伏せた。胸がドキドキしているが、このたわいもない会話が妙に心地良く厚子を刺激した。

 一限目の授業が終わって、厚子はひとりトイレに向かった。さっきのようなことがないように、急いでトイレに走った。誰にも話しかけられることなくトイレの目の前まで来た時だった。中から声が聞こえて来た。
「紀子ってなんか自分の世界に住んでるよね」
 厚子はハッとした。思わずドアから手を離した。声は続いて聞こえてきた。
「何考えてるかわかんなくて、苦手。無理」
「いてもいなくてもねえ」
 厚子は思わず川菜紀子のどこがそんなふうに思われるんだ、と、なぜか怒りに似た気持ちで、言いたいような気になった。
(だけど、なんで紀子?私ならともかく・・・)
 ワタシナラトモカク・・・厚子は胸がドクンと波打つのが分かった。
「厚子なにしてんの?」
 後ろからいつか厚子をはやしたてたクラスメイトが話しかけてきた。
「なんでもないよ」という言葉が厚子の口から出た。
 厚子はトイレのドアをあけた。すると、もう何をしゃべっているのかわからないくらいに、中にいたクラスメイトたちと楽しげに話しをしている厚子がいた。心の中で唖然とするばかりだった。
 友達ができた気がした。
 人気者になった気がした。
 川菜紀子になった気がした。
 今の厚子は昨日までの川菜紀子そのものであった。厚子はそこまで考えてクラスメイトたちを振りほどき、自分の気持ちの確信に触れないよう川菜紀子のもとへ走った。

 教室へ急いだ。
 廊下はいつもより長く感じた。
「ガラ」
 あせるように教室のドアを開けると前から三番目窓際の席にぽつんと一人、休み時間なのに誰とも話さずに机で本を読む、まるで厚子のような川菜紀子がそこにいたのだった。

「あさがお」9/30放送分終わり

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September 24, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第三話  熊木杏里の夜な夜な白書 9/23放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 9/23放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」第三話  9/23放送より

前回までのあらすじ
「朗読会あさがお」に参加するためどんな小説を書こうか迷う厚子。学校ではクラスメイトにそれがバレて囃し立てられてしまう。それを川菜紀子がかばってくれた。彼女は明るくクラスのリーダー的存在。厚子は彼女のようになりたいという想いを小説にすることを決め「朗読会あさがお」が行われている集会室を覗きに行く。そこでのみそのぎの言葉に厚子は心惹かれてゆく。


『次のニュースです。先月N市のマンションで小浜純子さん(28)が首を絞めて殺されていたのを近所の住人によって発見された事件で、犯人の行方は未だつかめておらず警察では引き続き捜査が続けられています。部屋を荒らされた痕跡はなく、玄関から侵入したものと思われ、警察では顔見知りの犯行としていますが・・・』

「怖いねぇ、あんたも帰り道とか気をつけなさいよ」
 厚子の母、恵美子がリビングでテレビを見ながら心配そうに言った。厚子は
「大丈夫だよ」と言って夕食のあと片付けをしながら二人分のお茶を入れた。
 四年前に父を亡くして二人暮らしとなった三葉家では会話が聞かれるのは食事の時間のみとなった。
 恵美子は一人娘がかわいくて、いつも悲惨なニュースを見ては、世の中を嘆き心配していた。厚子も病気で父を亡くして以来、恵美子との生活を大切に思っていた。
「ここのところ遅くまで起きてるみたいだけど、勉強でもしてるの?」
 恵美子がお茶をすすりながら言った。
「まあね、そんなものよ。お母さんまで遅くまで起きてたら体に悪いから早く寝なよね、じゃあね」
 厚子はトントンと階段を上がり恵美子がテレビのある部屋の方へ行ったのを確認してから自分の部屋へ入った。
 厚子の小説は完成に近づいていた。このところの夜ふかしがきいて、もうあと少しのところまできていた。
(今夜、書き終われば、明日の朗読会に行けるかもしれない)
 厚子はペンを握った。
 母の後ろ姿がちらつく。
 また一人で泣いているのだろうか。
 厚子は心を落ち着かせた。
 そして再び書き始めた。


「おとぎ話」というタイトルで厚子の小説は出来上がった。厚子は集会室への道を歩いていた。
 午前中の街はまだ静かでいつもとまるで別人のようだった。車も少なく雑音もない。一度来たときに見たアサガオが白い植木鉢にきれいだった。

 厚子はドキドキしていた。みそのぎは自分のことを覚えていてくれているだろうか。この小説を聞いてなんて言ってくれるだろうか。この間の小ぬぎという男のように褒めてくれるのだろうか。
 足どりはやや重く集会室についた。
 時計は午前八時五十分をさしていた。集会室に一人の女性が先に入ってゆくのを見た。
 厚子は小走りで追いかけ続いて中へ入った。
「あっ」
 みそのぎが立っていた。
 白いシャツにグレーのズボンをはいて、初めて会ったときの何倍も厚子には魅力的に見えた。
 声をあげたのはみそのぎの方だった。
「来てくれたんだね、よかった。きっともう大丈夫だよ」
「あっ、はい、あの、書いて来たんです・・・」
「座って」
 厚子は緊張のあまりそのみそのぎのセリフに違和感を感じなかった。
 集会室にはこの日、五人しか集まらなかった。みそのぎをのぞいて男が三人、厚子と右京という女が席についた。
「今日は少しいつもとやり方を変えたいと思います。実はぼくがとても心待ちにしていた方がやっと来てくれました」
 みそのぎが厚子を見た。
「どうぞ、前へ」
 厚子は真っ赤になった。しかしみそのぎの優しい笑顔が厚子を見守っていた。
「お名前を」
 みんなの前に立った厚子は目を俯せながら、
「三葉です」と言った。
 みそのぎが厚子の肩のすぐそばに立ち微笑んで言った。
「今日は三葉さんから朗読をしてもらいたいと思います」
 パチパチとわずかな拍手。厚子はたじろぎながら、みそのぎの言葉に胸が高鳴ってしまい、(自分のことを待っていてくれたなんて・・・)
 顔が赤くなって手に持っている原稿を落としそうになる。
「さあ、そんなに緊張しないで」
 みそのぎはよく見ると、茶色っぽい目をしていた。厚子は吸い込まれるようにみそのぎを見た。そして自分の書いて来た小説を読みはじめた。
 主人公は厚子本人だった。今の学校生活のことだったが、ここでは、厚子がそのうち川菜紀子のようなクラスのリーダー的存在の人気者になってゆくというものである。
 パチパチパチ、厚子が読み終えると、前回のときと同じように拍手が来た。厚子は足が棒のようになってしまい動けなくなってしまった。みそのぎが、
「すごくいい話だね。よかったよ」
 ポンと肩に手をおいた。厚子はふと力が抜け何か自分の中にたまっていた嫌なものが外に出たような晴れやかな気になった。
(意外と出来るものだな)
 厚子は自分に思った。
 その時、厚子はふとささるような視線を感じた。パッと顔をあげるとここへ来たとき、みそのぎが入り口で「右京さん」と呼んでいた女が厚子を見ていた。見ているというよりにらんでいるようだった。厚子は自分が何かしたのかと思ったが、瞬間、みそのぎのことが好きなのではないかと察した。厚子が席につくと右京は前をむいた。その横顔は凛々しい感じで、年は厚子よりも上で二十五、六歳に見え、白いTシャツにジーンズをはいているだけだったが、他の人より数段目立つだろうスタイルをしていた。
 厚子は、この時、自分もみそのぎのことが好きなんだと初めて感じた。胸がやけるようだった。
(この人にはとられたくないな・・・)
 厚子は素直にそう思った。
 朗読会は三人が読み切ったところで終了した。
 右京は読まなかった。みんなが先に集会室を出てから厚子もかばんを手に帰ろうとした。その時、
「三葉さん」
 二階の部屋へ行っていたみそのぎが戻ってきた。厚子は黙ってうしろをむいていた。恥ずかしくて振り向けなかった。
「こちらを向いてはもらえませんか」
 みそのぎが淋しげに言う。厚子はぎゅっと目を瞑った。
「あんなふうに人前で三葉さんが困るようなこと言ってすみませんでした」
 厚子はちがうのに、と思うばかりで振り向けなかった。
 すると、
「ぼくの気持ちは本当です。初めて三葉さんと会ったときから、忘れられないでいました。ぼくとおつきあいしていただけませんか」
 集会室が静かに返事を待っていた。
 厚子は、振り向いて
「はい」とひと言、みそのぎに告げたのだった。
(9/23放送分終わり)

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September 17, 2005

ラジオ夜ドラマ「あさがお」第二話  熊木杏里の夜な夜な白書 9/16放送分より

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 9/16放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」第二話 9/16放送より


 翌日、厚子は学校にいた。
 授業はほとんどうわの空でみそのぎのことを考えていた。厚子はちらしを見ては何度も昨日のことを思い出していた。何を書いたらよいのか、みそのぎの言葉が頭をめぐる。
「君の素直な気持ちでいいんだよ」
 授業が終わり休み時間になった。
「ふぅっ」とため息をつき厚子は机を離れなかった。
 ガヤガヤと教室はにぎやかなのに。
「厚子!!」
 声をかけてきたのはクラスの中でもリーダー的な存在の川菜紀子だった。
「何見てるの?」
 川菜紀子は元気な色の肌でやせた手くびと目がぱっちりしているのが印象的な女だった。厚子の手の中に見える朗読界「あさがお」の文字に一瞬おどろいた表情をして「小説」という言葉を目にしたのか、思わず言った。
「厚子、小説家になるの?」
 厚子はあまり人に話をするのがうまくないことを自分でわかっているので、なるべくすぐに答えた。
「ううん、小説家にはならないよ。ただ書いてみようかなって思ってるだけ」
 すると後ろから
「紀子—!」
 数人のクラスメイトが川菜紀子に集まってきた。
 厚子をかこむ壁のようになった。
「なに、これ」
 厚子の手からちらしを奪った。
「アハハ、なにこれ、小説家きどりですか?」
「あたし、前に厚子の感想文見ちゃったんだけど、文章がクサイ!!まじでびっくりするよ。きもちわるい」
 うつむいた厚子。すると
「いいじゃん別に。人それぞれでしょ」
 クラスメイトがもう話題を変えるしかないようにしていたが、自然と川菜紀子だけはちがっていた。


 その日、厚子は夕食を済ませると部屋で考え事をしていた。窓を開けると風が部屋に居座ろうとする。厚子は自分がおかしいのか、まわりがちがうのか、昼間のことを思うと息がつまりそうになった。
 机の上には白紙が何枚か散らばっていた。
(学校なんて行きたくない)
 厚子はどこかに逃げてしまいたかった。小説も半ばどうでもよい感じになっていた。書こうと思ってひろげた白紙が風に流れ落ちた。
 ベッドにうずくまりながら、ふと、みそのぎのことを思い出した。
(私が紀子みたいだったらな・・・)
 厚子は、はっとしてこれだと思った。床に落ちた白い紙をひろった。
(自分が理想の姿になってゆく物語を書けば・・・)
 ペンをとっていつも読んでいる小説を思い出しながら書きはじめてみた。
 しばらくしてふと厚子は明日が日曜だということに気がついた。朗読会「あさがお」のちらしを見ると『午前九時から』と書いてある。

 厚子は他の人がどんなことを書いているのか知りたいと思い、ペンを置き、明日、様子を見に行ってから続きを書こうと決めた。しかし本当はみそのぎに会いたかった。


『その女はぼくのくちびるばかりを見ていたが、胸がムカムカするような香水の匂いに、それ以上近寄れなかった。ぼくは気がつかないふりをしてバーを出た。次に女が待つホテルへ急いだ。雨が降ってはこまるから』

パチパチパチパチ、まばらな拍手が鳴った。
「よかったよ、小ぬぎ君」
 みそのぎの声がする。
 厚子は朗読会の行われている集会室のような部屋の外で、窓の下にしゃがみこんでそれを聞いていた。
「ありがとうございました」
 小ぬぎという男の声がした。小説といっても短くてまさに本人の望む男の姿が、技術もおちもなく、ただ素直に描かれているようだった。モラルや常識もない、ここではプレイボーイというやつかもしれない。
 厚子はいったいどんな人がこんな小説を・・・と思ったが、ひそかに聞いているだけが精一杯で中には入れずにいた。足もとの草むらが厚子の居場所だった。
「みそのぎさん」
 中で声がした。
 厚子はドキリ、とした。バレないように息をのんだ。
「なんですか?」
 みそのぎの冷静な地に足のついた声が集会室に響いた。
「ここで朗読をされた方は、なぜもう顔を出さなくなったのですか?」
 厚子は思った。そんなにしょっちゅう来れないだけじゃあないのか。
 すると、
「いいえ、来なくともよくなるのですよ。あなたもここで一度朗読をすればわかりますよ」
 みそのぎの声は宙を舞うへびのように相手の気持ちをつかみたいのか逃がしたいのか分からなかった。
 厚子は(きっとみんな一度で味をしめて自分で小説を書くようになるのだ・・・)
と推測した。
 とにかく厚子は自分にも書けそうな気がして、小説家になる予定はないが、心の中の出来事を人に話すだけでも気分が変わるかもしれないと思ったので、家に帰って続きを書こうと思った。それにみそのぎとまた言葉を交わせるかもしれない、思惑もあった。
 立ち上がって時計を見た。午前十時半を過ぎていた。今回はみそのぎの姿を見ることは出来なかったが、気がつかれないように集会室をあとにした。
 夏休みのため家に持ち運ばれた白い植木鉢にアサガオが何気なく咲いているのを厚子は自分のようだと思った。
(9/16放送分終わり)

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September 11, 2005

東海ラジオ 深夜劇場 ラジオ夜ドラマ

東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ  作・熊木杏里
「あさがお」 第1回 9/9放送

「みそのぎさん」
 厚子は手に持っていた本を本棚に置くと急いで本屋から外に出た。しかしそれは人違いであった。三葉厚子には忘れられない人がいた。それはもう四年にもおよんで厚子の心を捉えていた。
 厚子が高校三年の時のことだった。ある時、帰宅途中に、ふと、違う道を歩いてみたくなった厚子は、いつもとは別の細い路地を入っていった。あたりには古い家々と金木犀のような甘い香りのする植物と小さな公園があった。こんなところに公園があったなんて・・・厚子は思った。物静かな性格の上に、頭の良かった厚子は同年のクラスメートが自分より子供に思えて仕方がなかった。悪気はなかったのだが、そのせいで心から話せる友達がいなかった。はじめて来た思いのほか家の近所のその公園で厚子は知っている歌を口ずさんだ。
 赤い実がぁひとつ青い実がふたつ白い実はいくつ・・・歌声は消え入るように夕暮れの空へのぼって行き、夏の終わりをうかがわせる蝉の鳴き声に変わっていった。厚子はブランコに座って本を取り出した。
 学校の昼休み、いつも机で本を読む厚子。クラスメイトたちの話し声をまるでおとぎの世界の小人の笑い声のよ
うに感じながら、厚子はひとりそれらに微笑みかけることも出来ずに孤独な気持ちで本を読んでいた。まわりの子たちも、厚子のその孤独な雰囲気にひかれ声をかけてくるが、その後の会話が続かないので、皆それ以上踏み込むことはなかった。夕日に照らされながら、厚子は公園で本を読みふけっていた。
 ジリジリと背中が暑さを覚えた頃だった。前から一人の男が公園に歩きながら入って来るのが分かった。厚子はちらりと自分の目線をあげ、その男の姿を見た。公園のジャリを何度も無機質に歩く革靴の音、遠目だったが三十代前半の少し神経質そうな目をした顔立ちのきれいな男だった。こんな時に限り人はだれも通らない。厚子は少し気まずくなって、男がまだこちらを見ていないことを確認するとすぐに下を向いた。すると男のジャリを踏む音が少しずつこちらに近づいて来るのが厚子の耳に分かった。そんなに大きな公園でもない、ブランコと砂場があるだけの空き地に奇妙な緊張が走った。そして男はあきらかに厚子を目がけてまっすぐ歩いている。本を持った
まま厚子は文字など読んでいなかった。高校三年生の女子が制服でこんな夕暮れにひとりで公園にいたらどんなことが起こるか、厚子にもそれは想像がついた。
「本が好きなの?」
 男は厚子から1メートルくらい手前で声を発した。思いもよらない質問だった。とっさに普通の対応をしなければと厚子は
「あっはいまぁ」と言って顔をあげてみせた。
 男はじっと厚子を見つめながらやさしく笑って言った。
「ごめんね、驚かせるつもりじゃなかったんだ。ただ遠くから見てて君が本に熱中している姿が今時珍しかったから、気になって見てたんだ」
 厚子はその男の笑った顔が少し悲し気に見え、話し方の感じから悪い人ではないと悟った。
「実は、ぼくはこのあたりに住んでいるんだけど、毎週日曜日の朝九時にぼくの家で『朗読会』をひらいているんだ。みんなで自分の書いた小説を持ち寄り、そこで発表すると言うものなんだけど、まだ人数が少ないから君も来ないかな」
 厚子は不思議に迷いなく、それに行きたいと思った。それがこの男のせいなのか小説ということのせいなのか厚子にも分からなかった。
 蝉の鳴き声が公園内に響く。男は顔色を変えずに厚子を見ていた。
「あの、私、小説は書いたことがないんです」
 たどたどしく言うと、男は、
「いいんだよ、そんなにかしこまるようなものじゃなくて君の思っている素直な本当の気持ちを書けば。他のみんなもそうだから」
 男のその言葉は厚子の胸に素直に入ってきた。いつも読んでいただけの本を自分が書くなんて、厚子は心が少し弾むようだった。どうせ学校も楽しくないし、気分転換にいいかもしれないと思った。
「是非、参加させて下さい」厚子は言った。
 男は嬉しそうに丁寧に笑って、朗読会「朝がお」と書かれたチラシを厚子に手渡し、会費はいらないから小説が出来たらいつでもいいから日曜の朝九時にここに来てくれとチラシの地図を指差してから去っていった。
 厚子はぼんやりと男の後ろ姿を見ていた。
 朗読会「朝がお」代表者に、みそのぎ友也と書かれていた。
(9/9放送分終わり)

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