ラジオ夜ドラマ「あさがお」第十三話熊木杏里の夜なよな白書11/29放送分より
東海ラジオミッドナイトスペシャル
熊木杏里の夜な夜な白書 11/29放送分
深夜劇場 ラジオ夜ドラマ
「あさがお」11/29放送より
あらすじ
書いたことと現実が入れかわってしまう小説を、みそのぎも書いていた。現実で人を殺したことを忘れるために、違う生活を現実にしたはずが、みそのぎは厚子の愛を確信すると、自白し、警察に捕まってしまった。厚子はみそのぎははじめから現実をのがれることはできないと思っていたのではないかと察する。そしてみそのぎの出所を待つことを心に誓った。
最終話
「みそのぎさん・・・」
厚子は手に持っていた本を本棚に置くと、急いで本屋から外に出た。だがそれは人違いであった。厚子はため息をもらし、雑踏の中に立ち尽くしていた。通りの向こうの信号が赤から青に変わったとき、男が歩いてゆくのを厚子は見た。白いシャツにグレーのスボンをはいた長身の男だった。みそのぎによく似ていた。
(まだだよね・・・)と心の中で思い、あきらめて本屋にもどろうとすると
「どうしたのあっちゃん・・・」
手に何の本を買ったのかわからないが、大学で知り合った立川秀夫が立っていた。一緒に本屋に来たのだった。秀夫は心配そうに厚子を見ているが、厚子はそっけなく
「なんでもないよ、行こう」
と言って本屋を出た。外は初夏の香りがした。厚子はあれからずっと誰にも心を許せないでいた。秀夫が自分に好意を持ってくれていることもわかっていた。だが、どうしても何かが足りなかった。しかしみそのぎでなければ駄目だというそれが、何なのかも分からなかった。しかし、みそのぎを裏切ることは出来ない。それが厚子の心の呪縛であった。大学へもどる途中、コーヒーショップに目をやった秀夫が、
「あっちゃん、コービー好きだよね、ちょっと待ってて」
と言って日のあたるまぶしい道をかけて行った。厚子はそれを見て思った。牢獄の中で、日の光のあたらない毎日を鉛筆色の壁を見ながら、これから来るであろう自分との未来だけに希望をいだき、刑に服しているみそのぎのことを・・・。
それから更に四年が経ち、厚子が26になった秋。
みそのぎの服役が終わり、刑務所を出ると迎えに来ていた厚子を見て、みそのぎは一瞬何かを言いかけたが、思いとどまったようにやめて、そのまま歩き出した。
年齢よりも老け込んだみそのぎの、しばらくぶりに見るその後ろ姿を見つめながら、厚子は静かについていった。
(完)
ラジオ夜ドラマ「あさがお」11/29放送分終わり


Recent Comments